キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「なぁ未夢、そんな無防備でどうするわけ? イレイズにも騙されるわ、夏屋にも騙されるわ。お前、いつか本当に痛い目みるぞ?」

「う……。でも痛い目なら、もう見てます」

「へぇ、どんな?」


ニヤニヤ笑顔を向ける凌生くんに「あなたです」と小さな声で呟く。


「俺?」

「凌生くんが毒で倒れた時……地獄を見ました。私のせいで凌生くんが苦しい目にあって、しかも、もう会えなくなったらどうしようって。胸が張り裂けそうでした」

「……随分と俺を信用するようになったな」

「凌生くんのことは元から信用しています」


ピシャリと言うと、凌生くんは驚いた顔をした。

鳩が豆鉄砲を食ったような顔って言うのは、こういう事を言うんだろうなってくらい驚いた顔。


だけど数秒後には「は~」と。

凌生くんからお決まりのため息が出る。