キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


ううん、凌生くんだけじゃない。

きっと他のみんなも同じはず。


総季家の手から逃れる、治外法権のB地区。

そこはユートピアなどではなく、悲しい監獄だった。


「……いくぞ」

「え、あ――ッ」


ヘタッと床に座り込んだ私を見て、凌生くんは後ろ足で床を蹴った。

そして右こぶしにこめた力を、イレイズに向かって思い切りぶつける。


「ぐ、あ!」

「――ぬるいな。まだ俺がここまで動けるってことは、大した量じゃないだろ」


バキッと、鈍い音がする。

と同時に、血しぶきが廊下の壁を汚した。


「俺を殺す気で来いよ。次、総長に会ったら言っておけ。半端な気持ちでB地区の敷居をまたぐと地獄を見るぞってな」

「う、ぐっ……――」

「……もう伸びたのか。張り合いない奴だな」


イレイズの胸倉をつかんでいた凌生くんは、手を離してポイッと投げた。

「コイツどうする?」と聞く雷斗くんに、凌生くんが自室に入りながら答える。


「外へ捨ててこい。目障りだ」


パタンッ