頭の中に、地下での光景がよみがえる。
あれほど優しくしてくれたのに。
ありがとうって、言ってくれたのに。
今となっては、その人は私を傷つけようとナイフを向けている。
「そんなことって……っ」
「だから言ったろ、未夢」
唖然とした私に、凌生くんが笑う。
「〝優しさは裏切りと同等の価値だ〟ってな」
凌生くんの笑顔がとっても怖くて、笑ってるのに笑ってない気がして。
……その笑顔を見て、やっと理解した。
このB地区にいる人たちは、こういった裏切りを何度も経験してるんだって。
凌生くんが「何も信じられない目をしてる」のは、そうならざるを得なかったからだって。
総季の街から逃げてきたB地区でさえも、危険は無限にある。
誰もかれもを信じていては、足をすくわれる。
だから、
「だから凌生くんは、自分しか信じられなかったんだ……」



