「総季家のお嬢様なのに、服一枚も満足に着させてもらえないの?」
「私は制服以外の服はあまり持たせてもらえなかったので」
「不遇とは聞いてたけど、けっこう深刻なんだね」
「ハハ……でも、もう慣れました。年齢に合わない服を嫌味で渡される事がありましたが、学校に通い始めてからは休日も制服を着ていたので。制服を買って貰えただけ有難いなって。
だから私にとって可愛い服は、見てるだけでお姫様になれた気がするんです」
すると怜くんが抑揚のない声で言った。
「なれば?」と。
「お姫様になれば? 総季の娘なんて、お姫様と同等の扱いだよ。誰もが喉から手が出るほどあんたを欲しがってる」
「それは……どうですかね。今の総季は嫌われていますし、手を組みたくないはずですよ」
「……へぇ」
怜くんは静かに返事をした。
そして訪れる、気まずい静寂。
変なこと言っちゃったかな?と、他の話題探しに集中していた時。
「あんたはいいよね」と怜くんが言った。



