キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ

「確かにそうですが……」


グッと力を入れて止血してくれる梗一くんの手を見る。

触れた指からあたたかい温度がゆったり伝わって来て、切った痛みが遠ざかっていく気がした。


「でも何かをしなければ何も変わらない。

じゃがいもの皮むきをしたいと思わなければ、こうして梗一くんの温かさに触れることもなかったわけですから」

「!」


バッ


梗一くんが、急に私から離れた。

今までの余裕ぶったオーラは感じなくて……。

むしろ教室にいそうな青少年のような顔をしている。


「なんだか昔に戻ったみたいで嬉しいです」

「……嬉しい?」

「昔みなさんと遊んだ時、楽しかったです。みんな笑顔でした。それに皆さんお互いの事を名前で呼んでいた気が……」

「各両親から〝苗字〟で呼びなさい、と言われましたからね。不要な慣れ合いは避けろってことでしょう。同い年以前に、名家でライバルですから」

「名前呼びを禁じられていたんですか……」