キケンな夜、追われる少女は、ヒミツの甘園へ迷いこむ


「ど、どういたし、まして……っ」


今までお兄さまからキツイ言葉を言われる日は数えきれないほどあった。

だけど感謝される日は一日たりともなくて……。


こんな温かい眼差しを向けられるのは、お屋敷ではありえないことだった。

だから、かな。


「あれ、よく見えな、……いたっ」


霞んだ視界の中、無理やりピーラーを動かしていると。

ガリッと、自分の親指を傷つけてしまった。

ポタポタと血が流れるのを、少しの間、呆然と見る。


えと、あぁそうだ。

とりあえず止血しないと。


「じゃがいもに血がつかないようにしなきゃ」


テイッシュを探した、その時だった。


グイッ


「何やってるんですか、あなたは」

「! 梗一くん……?」


血が出た手を引っ張ったのは、さっきまで姿を消していた梗一くん。

肌触りのいいハンカチが、私の指に巻かれている。

これって、もしかして梗一くんの物じゃ――