「い、いや……助けて! 凌生くんっ」
咄嗟に出た好きな人の名前。
だけど聞こえた声は――
「春宮じゃなくて悪かったですね」
「……へ? 梗一くん?」
振り向くと、和服姿の梗一くんの姿。
あ、あれ?
「イレイズじゃない……?」
「イレイズが出ましたか? 何人?」
「男の人が一人でしたっ!」
早く報告しなきゃと焦る私とは反対に、梗一くんは「ふぅん」とのんびりな返事。
「また一人ですか。なら他の者に任せておきましょう」
「え、でも梗一くんが行った方が……。前も、女性の叫び声が聞こえましたし」
「言ったでしょう? ここいいるのはほとんどが暴走族だと。常に幹部が行かなくとも、一般隊員だけで何とかできます」
フロンティアを見くびらないでください――と遠回しに言われたみたい。
「すみません」と頭を下げる…………と、見つめた床がわずかに明るいことに気付く。



