私の顔に浮かぶ涙を、凌生くんが優しく撫でる。

そしてジャケットを私の体にかけたあと、一息つくためラテを飲んだ。

すると、運転席でクツクツ笑う声。


「さすが凌生様。まだまだお若いですね」

「……いつも面倒ごとには耳栓するくせに。良い趣味だな、オリ」

「まるで私が悪いような言い方はおやめください。たまたま耳栓するのを忘れていたんですよ」


嘘八百な言い方に、凌生くんの眉毛がピクリと動く。


「たぬきじじいめ」

「確かに学生ではありませんが、ジジイと呼ばれる歳でもありませんよ」


再び、オリさんがクツクツ笑う。

そんな運転手を横目に見ながら、凌生くんはため息交じりに窓の外へと目を移した。

だけど手だけはいつまでも私の頭に置かれていて。

ずっとずっと、優しく撫でてくれていた。



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