「や、凌生く……オリ、さん……がっ」
オリさんがいるからやめて――
そう言おうとしたのに、凌生くんは知らん顔。
そればかりか。
「俺とキスしてるのに他の男の名前を出すなんて、いけない猫だ」
「ちが、」
「ペナルティ追加。車が停まるまで離してやんない」
「んぅ――っ」
息がしづらくて、半ば生理現象で潤んだ瞳が、凌生くんの赤いピアスを映し出す。
ぼやけた視界に赤が映えて、まるで夜景を見ているよう。
「泣いてんの? 可愛いなぁ、未夢」
するりと頬を撫でながら、甘い言葉を吐く凌生くん。
「や、めて……っ」
「聞こえないな」
だって、だって私は……人質でしょ?
ただの人質なのに、どうして服を買ってくれたりキスしたりするの?
凌生くんも言ってたでしょ?
――人質なんて鎖につないで放置するに決まってんだろ
それなのに、どうして放置しないの?
どうして……構ってくれるの?



