「……あ」
そうか。さっき一人になったんだから、逃げるチャンスがあったんだ!
それなのに私は当たり前のように車に戻って来ちゃって……何やってるんだろう。
……まぁ逃げたところでお屋敷に帰る勇気はないから、結局車に戻るしか選択肢はないんだけど。
「さっきからなに顔を青くしてんだよ」
「なんでもないです……」
逃げるチャンスを自ら逃してることに気付きました、とは言えないので黙っている。
すると凌生くんが「誰でもってわけじゃない」とポツリとこぼした。
「なんですか?」
「さっき未夢は〝俺は誰にでも優しい〟って言ったけど、違うぞ」
「違う?」
「俺が優しくするのは、お前だけだ」
「え、」
私だけ?
どうして私だけに優しくするの?



