思わず息を呑んだ。

 その人の顔が、とても綺麗だった。

 スーツよりも、純黒の髪。

 切れ長の目。

 鼻筋が通っていて、全てのパーツが文句なしに整っていた。



「……綺麗」



 思わずそう呟いた。



「何?」



 その瞬間、一気に周りの空気が凍りついた。

 さっきまで笑っていた人が、突然ギロリと睨む。

 整った顔ですごまれると、迫力がある。

 頭の中には、怖いという言葉でいっぱいになる程。



「申し訳ございません!私の余計な一言で、貴方様に不快な思いをさせてしまったこと、誠に申し訳ございません!」



 私は手に持っていた箒を置いて、深々と頭を下げた。

 当然のことだ。

 参拝するお客様に向かって、いきなりなんてことを言ってしまったんだろう。

 穴があったら入りたい……。



「……なるほどな」



 ボソリと、そう呟かれた。

 恐る恐る顔を上げると、その人は妖艶めかしく笑っていた。



「俺にすごまれても逃げずに立ち向かう強さ。そして芯の強さ……合格だ」



 なぜか突然拍手をされた。

 なんで?

 いや、それよりも。