あんなやつなんか好きになる訳ない。

あんな女を取っかえ引っ変えしてる男にだけは溺れたくない。

それだけは確かだ。

そう。あいつは最低クズ男。

何度も心の中で繰り返す。

ちゃんと脳に定着させなきゃ。

あんなやつ相手にしちゃダメだって。

そうだよ! 胸に誓ったじゃない!

たとえ世界中の女の子が全員あいつに落ちたとしても!

私だけは絶対に落ちない、って!

うぅ……、なのに…、なのに……!

昨日の会話を思い出して、心拍数がグンッ、と上昇していくのを感じた。

ーー僕の大切な大切な彼女が襲われているんです。火事場の馬鹿力のようなものですよ

なんであの時私…、

ドクン!ってなっちゃったんだろ。

ーーどうしました? あ、もしかして惚れました?

ーーほっ、惚れてなんて…っ

なんであの時私…、

‪”‬ない‪”‬

って言いきれなかったんだろ。

え、やだ。ちょっと私……!!

完璧に、

‪”‬あんな奴に興味はない!‪”‬

って心の底から断言出来ない今の自分にほんっとに腹が立つ。

「あんなクズ男に惚れるわけないから!絶対に!」

もうムキになって机を叩いたその時。

「おーい! ちょっと聞けー!美化委員は今日放課後グラウンドに集合するようにー! 以上だー!」