反抗的にムッ、と唇を引き結び軽く睨む。

「……嫌って、言ったらどうなるの」

「もちろん​────」

数歩歩み寄ってきてニコッ、と微笑みながら私の耳元に唇をよせた。

「パンダ……」

「ご、ご一緒しま、しょう……」

「はいっ」

今朝見てしまった光景が頭を過ぎってしまう。

ほんっと…朝っぱらからバカじゃないの!

「ちょっ……何この手…」

マンションを出たところで葵が私の手を取り指を絡めてきた。

「何って…恋人繋ぎですよ?」

天然のプレボーイだ、こりゃ…。

いや? 計算尽くされたプレイボーイかもしれない。

ギュッ、と強制的に与えられた温もりから逃げるようにして手を振り払う。

「これから学校行くんだから…っ、やめ​────」

「やだなぁ、先輩。……先輩に拒否権ってありましたっけ?」

「うっ…」

すぐに振り払っていた手の動きを止めた。

止めざるを得なかった……。

ギュッ、と恋人繋ぎは続行され、私よりもひとまわり大きな手に包み込まれる。

「あっ、あれは!一応言っとくけど私が買ったやつじゃないからね!?お母さんが…!どっかから買ってきたやつだから!」