襖が閉まり、しばらくして芙蓉の寝息が聞こえてくると、今夜はなかなか眠れないだろうと思う夕夜。
 人でなしの兄をもつ芙蓉は、夕夜のことを“理想のお兄ちゃん”だといつも言っている。
(理想のお兄ちゃん、か…)
 夕夜は、小さくため息をついた。