「うん。市民の血税でいいお給料貰ってるんだから、もっと市民に対して親身になるべきよね」
「というか、ふうちゃん」
「ん?」
「僕は15時には仕事終わってるし、電話してくれたら迎えに行ったのに」
「ありがとう。でも、私はもう御厨家の人間じゃないし、兄の後始末で夕夜さんに迷惑かけられないよ」
「また、そうやって遠慮する…」
「遠慮というか、考え方の癖なのかも。それにしても、悲惨な話を聞いたから尚更、私はこんなに優しい人と結婚できて幸せだと改めて思ったわよ」
「ふふ…そこはお互い様だよ」
 その晩、芙蓉は心身の疲れで爆睡し、翌朝は遅刻しかけてしまった。
 更に数日後、芙蓉のケータイに、女が泣きながら電話をかけてきた。
 相手は雅子ではなく、芙蓉の元同級生の光希だ。