バイクで団地に戻ると、玄関からいい匂いがしてきて、芙蓉は我に返った。
(しまった!雅子さんに気を取られて、夕夜さんがもうとっくに帰ってること忘れるなんて…新婚早々、私ってば!)
 大慌てで、芙蓉は、
「ただいま!ごめんね!?遅くなっちゃって…」
 夕夜は、いつも通り穏やかな笑みを浮かべながら、夕食を作っていた。
「おかえり。気にしなくていいよ。ふうちゃんは今日休みだったんだし、羽根伸ばしてきたんでしょ?」
「うん。そのつもりだったんだけどね…」
 二人は、夕飯を食べながら、今日の騒動のことを話していた。
「お兄さんがDV加害者で、ふうちゃんが被害者女性を助けたとは、皮肉なめぐり合わせだね」
「私が悪いわけじゃなくても、兄のやらかしたことともなると、放っておけなくて…それに、バビロンも最悪で全然頼りにならないし」
「バビロンって、警察のこと?」