かなり古風な雅子は、もう自分は疵物だから、一樹と別れたら次はないとも思い込んでいる。
 芙蓉は、恋愛の機微にはかなり疎く、その気持ちがよくわからない。
「とにかく、一人で抱え込まないでくださいね。私に出来ることがあれば、いつでも連絡下さい」
 芙蓉が言うと、雅子は涙目で、
「ありがとう…。何より、結婚おめでとう。せめて芙蓉ちゃんだけは、あの素敵な旦那さんとずっと幸せでいてね。二人、本当によく似合っているから」
「え?」
「あ、実はこの前、あなたたちを見かけたのよ。ショッピングモールの駐車場で」
 雅子は、その時にも一樹にぶたれたことまでは言わなかった。
「じゃあ…今日は本当にありがとう」
 二人は、警察署の前で解散した。
(雅子さん、大丈夫かなぁ…?兄が最悪な上に、警察まで酷い対応だし、傷口に塩を塗られて終わっただけかも)