「あの…大丈夫ですか?」
 芙蓉が声を掛けると、女性は驚いたように顔を上げた。
(あれ?この人って確か兄の…)
 そう思っていたら、
「芙蓉ちゃん…!」
 泣きすぎて顔がぐちゃぐちゃになった女は、なりふり構わず芙蓉に縋り付いてきた。
「おっとっと…雅子さんですよね?こんなところでどうしたんです?」
「私の話、信じてくれる…?」
「話してみてください」
「信じられないかもしれないけど、ここに置き去りにされて…」
 芙蓉はギョッとして、
「置き去り?それって、兄が?」
 雅子は泣きながら頷いた。
「兄が冷酷な人間なのはよく知ってますけど、どうしてそんな酷いこと…」
「正直、よくわからないわ…。ドライブの休憩中、一樹さんが急に激怒して、車から放り出されてしまったの…」