芙蓉は、そこまで言うと、顔が火照るのを感じた。
 この田舎町では、星がよく見える。
「あー…今夜は星がきれい…ねっ!?」
 照れてしまうのを誤魔化すように芙蓉は言ったが、
「ふうちゃん。本当に相思相愛なら、もう出て行くなんて言わないよね?」
 夕夜は、芙蓉の横顔をじっと見つめながら問い、芙蓉はただ小さく頷いた。
「夢でも見てるみたい…」
 芙蓉がポツリ呟き、
「それを言うなら、僕だって同じだよ」
 芙蓉も夕夜もシャイなので、この時点では特に進展はなかった。
 しかし、相思相愛と知りながら一緒に暮らしていたら、甘い雰囲気になるのも時間の問題だ。
 出勤時刻の差こそあるものの、二人の時間を大切にしていた。
 裕福とは言えないが、甘く幸せな日々の始まり。
 まさか、ここから新たな展開があるなどと、芙蓉は全く予想もしなかった。