それまでは、優秀で将来性もある夕夜に、競うように散々媚びてきた女たちも、蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなった。
(僕から肩書きがなくなれば、女性がみんな掌を返すのは、まさに想定通りだったな)
 夕夜は、誰にでも親切である一方、かなり冷静なタイプでもあるので、ショックではなかった。
 それよりも、日に日に美しく成長する芙蓉から目が離せなくなり、そんな自分に戸惑いを感じている。
 頼られることを嬉しく感じつつも、芙蓉が泊まりに来た夜はいつも、眠りに落ちるまでに時間がかかってしまう。
 それでも、いつの間に眠っていた夕夜は、朝の光と香ばしい匂いで目が覚めた。
 まだ少しぼんやりしながらキッチンに向かうと、芙蓉が朝食を作っているところだった。
「あ、夕夜さん。おはよう。勝手に朝食作っちゃったけど、食べてもらえるかな…?」
「ありがとう。美味しそうだね」