これだけ慌てる理由は、授業に遅れるからだけじゃない。

この学園は学年別で1人、1番成績のいい人を決める。

その1番になった人は、なんと次の年の学費が全て免除されるんだ。

成績もだけど、素行が良かったり、ボランティア活動とかも含まれる。

ということは、当たり前のように遅刻も含まれるんだ……。

そして今走っているのが目撃されたら、もちろん減点。

だけど走らないと遅れてしまうから……走らないと。

ガラッとドアを開け、すぐに席に座った。

私たちが席に着いた瞬間、予鈴が鳴り終わりギリギリ助かった。

先生が教室に入ってきて、話が始まった。

すると隣から机をつんつんとつつかれた。

「は、はいっ」

振り向くと高崎四季はちいさな声で言った。

「遅刻?」

そう聞かれそっと頷いた。

そしたらニヤリと口角を上げ、笑われた。

何故かその笑顔に胸がドキリとした。

「美優ちゃんが遅刻って珍しい」

クスクスと笑われ少し恥ずかしい。

もう彼のことを見るのはやめよう。

そう思って私は前を向いて話を聞いた。