「…路地裏なら疲れない、かも?」
こういうところには、必ず路地裏が存在している…はず。
居心地がいいとはお世辞にも言えないとは思うけど、今の私にはうってつけの場所だ。
…よし、探そう。
一人になるためにあの家を出て、一人暮らしを始めた。
一人が寂しいと思ったことはない。
…でも、時々ふと思う。
私一人がこの世界から消えたところで悲しむ人なんて、きっといないんだろうな…って。
今日はいつもより感傷的になっていたのかもしれない。
外に出たら、気づけば不思議と足はここに向かっていた。
「…思ってたより酷い」
ここに来るまでのことをぼんやり思い返していると、目的地の路地裏を発見。
想像していたより数倍汚いし、狭いし暗いし長居したいとは到底思えない。
…そりゃそうだよね、路地裏だもん。
逆に何を想像していたんだろう…?と、数分前の私に文句を言いたくなった。
「……もういいや。今日は帰ろう…」
なんだかバカバカしくなってきて、来た道を引き返そうとしたとき。
「…なに、君。こんなとこで何してんの」
抑揚のない冷え切った声が、夜の静寂を震わせた。