香り高い茶葉の匂いと、焼き菓子特有の甘さが部屋全体に広がる。



「簡単に言うと……まぁ、族の会合ってとこ。同じ区の組同士が集まって、話し合いみたいなのをするって感じ」



ティーカップと可愛いお菓子たちを抱えた芹くんが、ゆるいスウェットに着替えて部屋に戻ってきた。



なんだろう…大事な話をする雰囲気だったのに、違和感しか感じない…。



芹くんが私をお姫様抱っこで寝室に強制連行した後。



『…スーツ、着替えてくるから待ってて。絶対逃げちゃダメだよ。いーい?このマンションから逃げられると思わないこと』



軽い脅迫まがいなセリフを残してリビングに戻り、今はまた私がいるこの寝室にいる。



「だからろくな連中がいないし、危ない奴ばっかが集まる。放っといたらすぐ他の組と喧嘩しよーとする奴らなんだよ。結羽なんてすぐ食べられちゃうじゃん」



懇麗会について話してくれるらしい…けど、それより気になるのは────



「…なんで、芹くんがそんなこと知ってるの?」



まるで、芹くんもその人達の仲間みたいに。



「芹くんは………不良、なの?」



「………どっちだと思う?」



私を見つめる瞳の奥が、灰色に曇る。