『…はぁ…なんでこんなことに…』
あれから、八木邸から前川邸に戻って、縁側に 私と土方さんと総司が座っている。
歳三「チッ…面倒くせぇことになりやがった。 ちゃっかり門限の許可も取りに来やがったから…ありゃ、意地でもお前に女を抱かせる気だぞ」
総司「…誤魔化すしかないですよねぇ」
はぁ…と三人同時にため息を付いた。
歳三「…女に悟られるんじゃねぇぞ」
『…わかってます、うまく話を纏めておきます』
どうしようかと、対処方法を考えながら、とうとう夜を迎えた。
鴨「浅葱!! はよぉしろ! 行くぞぉ!!」
忘れててくれないかなぁ…なんて考えてもいたが、きっちり来てしまった芹沢派。
『分かりました、行きます』
歳三「…おい雪景、ちぃと待て」
『…? はい?』
土方さんに呼び止められて、手渡されたのは 小判が三枚。 …つまり、三両だ。
『…なんです、これ』
歳三「…いい女でも見つけたら、贈り物でもしたらどうだ」
ふっ…と笑っている。 …案外、土方さんも乗り気だったりするの…?
『……あの…私も一応女なんですけど』
歳三「…そうだったな」
『ぶち殺しますよ……でも、これ受け取れません。 だって私、着物とかも買ってもらっているのに、これ以上貰うなんて…何、壬生浪士組の資金を減らして死に急いでるんですか』
ギロリと睨みつける。
歳三「お前変な所で律儀だよな、黙って受け取っとけよ。 その代わり、これからいっぱい こき使ってやるからよ」
『…上等です。 …まあ、女の人には使わないでしょうけど』
袂に三両を突っ込むと、朝と変わらぬ格好のまま、外へ出た。
あぜ道を歩きながら、島原へと向かう。
鴨「お主、歳はいくつだ」
『十八です』
鴨「その歳で女を知らぬとは…変わった男もいたものよ」
いや…まあ、女なんですけどね。
重助「健司を見習いな」
平間さんが、誰かの背中をバンッと叩いた。
そこで、今朝あったときとは一人、人が増えていることに気がついた。
『…野口さんですか』
健司「お前が浅葱か! 聞いてはいたが、すんごい美男だな。 その顔で女を知らないなんて、損してるなあ…俺だったら、この世の女抱きまくってるぜ」
なんて、ニヤケ顔で話を止めない野口さん。
『…いいんですか、恋仲の人がおられるのに』
健司「いいんだよ、俺の女は物分かりがいいからね。 それに、女が居ても、島原やら祇園やら上七軒に行く奴らばかりさ。」
確かに、江戸時代 京都には、京都五大花街なんて言われて、祇園甲部・宮川町・先斗町・上七軒・祇園東があった。
『その女子は、物分かりがいい女を演じているだけですよ、きっと。 好きな男に、面倒くさいと思われて 嫌われたくないじゃないですか』
そんなこともわからないのなら、いくら顔が良かろうと 好きにはなれない。
健司「…浅葱って、女知らねぇ癖に、妙に女心分かってるよな。」
『……自分に置き換えて考えれば、簡単ですよ』
馴れ馴れしく肩を組もうとしてくるから、するりと、さり気なく避けた。
健司「つれないなぁ…」
五郎「はぁ…そのくらいにしておけ、野口」
見かねた五郎さんが、助け舟を出してくれた。
鴨「___もうすぐ着くぞ」
芹沢さんの声が聞こえた。
視線を上に向けると、島原大門が目の前に広がった。
『…多いなぁ』
行くか、戻ろうか、
門の前で思案している男達。
想像以上の賑わいに、目が眩みそうなほど きらびやかさ。
錦「あまり きょろきょろ するな。 俺たちも田舎者だと思われるだろう」
門を跨いで、あっちこっちに視線をめぐらしていると新見さんに注意された。
『わかりましたよ…』
確かに、自分のせいで恥をかかせる訳にはいかない。
鴨「ヨォシ、ここだぞ。 浅葱」
足を止めたのは、『角屋』の前。
『……かどや?』
五郎「すみや、だ。 …雪景、お前本当に疎いんだなぁ」
呆れた目を向けてくる芹沢一派の視線に、カッと頬が赤くなった。
『分かりにくい名前してるからです』
鴨「まるで小童だな。」
ガハハと、私をひとしきり笑いながら、角屋に入っていく芹沢さん。
その後に続いて、新見さん 五郎さん 平間さん 野口さん…と入っていくのを確認し、私も後ろ髪を引かれる思いで中へと足を踏み入れた。

