五郎さんは、神道無念流の免許皆伝で 左目が事故で潰れているにも関わらず、左に打ち込みを猛烈に切り返した。
逆に、見えるはずの右側からの打ち込みに対して、少し隙があったという。
重助「俺は平間 重助だ。 副長助勤 兼 勘定方をしている。 よろしく頼もう」
『平間さん、よろしくお願いします』
ぺこりと頭を下げた。
歳三「…野口はいないのか」
鴨「恋仲の女のところだったかな…野口も隅に置けないのぉ」
ガハハと、豪快に笑う芹沢さんに、嫌な気持ちはしない。
…本当に、この人がお梅を手籠めにしたのか疑いたくなるほどに。
…というか、みんな私が女だってことには気が付いてなさそうだし…とりあえず安心だな。
?「芹沢はん、こちらに居らしはったんどすか」
シャランと、簪から垂れた金具がぶつかり合って音を奏でている。
鴨「おお、梅ではないか。 よいよい、こちらに来んか」
…まさか、この人がお梅…?!
ばっと、後ろを振り向くと、白粉を首まで塗り 美しい桜の模様の着物を着ている女が居た。
その着物の美しさに負けることなく、その顔も上玉だった。 眉を頼りなく垂れ、大きな猫目、小さな唇に赤い紅を ポンッと、乗せていた。
梅「芹沢はんったら…もう。 こない飲みはったら 眠たなりますぇ」
甘い猫撫で声を出しながら、芹沢さんの横に座った。
鴨「梅…そうだ。 この者を紹介してやろう。 新しく副長助勤になった、浅葱 雪景じゃ」
鉄扇を閉じて、扇の先で私を指した。
梅「…あら、随分 麗しい御方やな。 浅葱はん? 私、梅いいます。 よろしゅう」
ぺこりとこちらに頭を下げ、白いうなじに細いおくれ毛が、何本か垂れて こちらを覗いている。
『お梅さん、よろしくお願いします』
女の私でも、惚れ惚れするほどの美貌である。
鴨「浅葱、梅に惚れるなよ」
『ふふっ、ご安心を。 その気はありませんゆえ』
芹沢さんの冗談に、笑ってしまった。
鴨「…その気がないとは…つまりお主、衆道の方か」
んなわけねーだろ、バッカヤロー!!
…なんて言いそうになるのを、なんとか抑えながら 笑みを返した。
『好きになる方は女子ですが、興味はありません』
多分今の私の顔、めっちゃ引き攣ってるだろうなぁ…。
鴨「…ヨシッ、まだ飲み足りないのぉ。 酒をもってこい、梅よ」
ポンッと、さり気なく梅の尻を叩いたのを、私は見逃さない。
梅「もぉ…分かりんした。 待っとおせ」
ふらりと立ち上がり、おそらく厨の方へと足早に向かっていった。
鴨「…梅の前では、あやつが やきもちを妬くからなぁ。 …浅葱」
『…はい?』
鴨「夜、島原で飲み明かそうぞ」
…え…、島原って…あの島原、だよね…?
だから、お梅の前で言えなかったってことが…。
総司「せ、芹沢さん! 雪景さんは、そういうところには慣れていなくて___」
鴨「だからワシが連れて行ってやると言っているのだ。 …のぅ、土方くん。 女を知るというのも大事な男の役目よ」
わ、私 男じゃないし…なんてことは言えないし。
…でも、も、もしかしたら、土方さんが断ってくれるかも…!!
歳三「…ああ、そうですね」
土方さぁぁん!! と、叫びたくなる。
土方さんの方をグリンと、恨めしく見ると 土方さんも苦虫を潰したような顔をしていた。
鴨「いつもは澄ました顔の土方くんの、そんな顔が見られるとはね…。 愉快 愉快」
またもや、閉じていた鉄扇をバッと広げた。
鴨「土方くん、門限は…いいね?」
門限…って、宵五ツ時(午後8時)だよね…? 破ったら切腹とか聞いたことあるし…。
歳三「…ええ、勿論です」
おいおいおい、許可しちゃったよ…!!
愕然としながら、土方さんを見る。
鴨「というわけじゃ。 浅葱、新見、平山、平間。 夜は空けておけよ?」

