文久三年 六月一日
朝餉を幹部の人たちと食べ終えた後、皆で道場に足を運んだ。
近づくにつれて、威勢の良い掛け声がよく聞こえてきた。
中に入ると、むんっと熱気が肌に触れる。
朝から自主的に練習してるのか…凄いなぁ。
…そして懐かしいな…なんて思う。
一人、平隊士らしき人が、幹部たちが来たことに気がついて手を止めると、皆気付き始めて、どんどんと手を止めだした。
「「「「「「「お疲れ様です!!」」」」」」」
腰を45度に折り、一斉にそう言う。
どう見てもお疲れ様なのは、君たちの方だけどね…。
勇「皆、一旦手を止めて話を聞いてほしい。 重要なことだ」
近藤さんがそういうと、皆 ピンッと背筋を伸ばし、見慣れない私に視線を向けている。
勇「…自己紹介を、」
『はい。 私は、浅葱 雪景と申します。 本日を持ちまして、副長助勤を勤めさせて頂くこととなりました。 よろしくお願いします』
ぺこりと、頭を下げる。
それと同時に、ザワッとどよめきが道場を走った。
勇「雪景くんは、北辰一刀流の免許皆伝。 実力も申し分ない。」
ま、マジか…。 だ、大丈夫なのかな、?
みんなまだ混乱してるのに、批判や不満だけが積もりそうでしょうがない。
でも、局長たちに物申せる強者はおらず、ただざわつくのみだ。
勇「山野 八十八、楠 小十郎、馬越 三郎、馬詰 柳太郎、佐々木 愛次郎、平塚 治郎は来てくれ。 …他の皆は練習に戻ってくれて構わない」
まだ、どよめきが収まらない道場。 おろおろと、皆 私をちらちら見ながら稽古をし始める。
おいおい…この組み合わせ、新撰組好きで知らない人いないでしょ…。
隊中美男五人衆じゃない…!! …なんか一人だけ知らない人いるけど。
ぎょっと、目を見開いている私を土方さんは、一瞥すると
歳三「早くしろ」
『は、はいぃ…』
涙目になりながら、集まってきた六人のもとに向かう。
歳三「挨拶しろ、雪景」
『…改めまして、浅葱 雪景と申します。 歳は十八ですから、皆さんと年も近いことですし、身構えることもなく仲良くしてくださいね』
初見が大事だよね…。 …うん、印象は悪くないはず。
歳三「巡察に廻ることがあるが、この組み合わせで廻ってもらおうと思う」
『見廻りですか…』
勇「昼と夜の巡察があるんだよ。 主に副長助勤が平隊士を率いていくんだ。」
なるほど…。 じゃあ、この人たちを率いていくのは私ってことね。
治郎「よろしくです、浅葱先生。 俺は平塚 治郎です」
『ヒラツカ君ね、よろしく』
この子がヒラツカ君かぁ…うん、そこまで格好良くないから、ぱっとしない顔同盟でも組めそうだ。
治郎「え、いや、ヒラヅカなんですけど…」
『うん、ヒラツカくんね。 分かってるって』
治郎「ぜってぇ分かってねぇだろコイツ!!」
…なんだか怒ってるけど…まあいっか。
小十郎「え、ええっと…俺は、楠 小十郎です。」
若々しく、目がぱっちりしていて若干垂れ目、色白で下ぶくれの顔で、声も透き通り 男にしては高め。 そこらの女より余程女らしかった。
柳太郎「お、俺は馬詰 柳太郎です…よ、よろしくお願いします…」
馬詰と名乗った彼は、如何にも気が弱そうで 実際に、女好きでもあるにも関わらず、仲間と飲みに出掛けることはなかったという。
三郎「俺は馬越 三郎です! 浅葱先生、よろしくお願いします…!」
彼は最年少で、十六歳で入隊したという。 なんというか、美しいというよりも、やんちゃ っぽくて少年さが抜けない感じで、丸くて大きい目に 素直そうな性格が、良いのかもしれない。
愛次郎「俺は佐々木 愛次郎と申します。 浅葱先生、よろしくお願い致します」
ぺこりとこちらに頭を下げてくる。
…流石、隊中美男五人衆の一人なだけある。 背はそれほど高くなくて、私とそこまで変わらないものの、着物の間から垣間見える 顔も体も雪のように白い。
なんてったって、肌の弾力が抜群なんだとか。 …仲良くなったら、ほっぺたとか触らせてもらおう。
『…ということは、貴方が山野 八十八 君かな。 よろしくね』
色白で、若干 猫目の目、頬は高揚し、唇はまるで紅を差したよう。
八十八「よろしくです、浅葱先生」
そういえば、史実では 新選組で一番隊隊士だったよね?
一番隊は、たくさんある隊の中でも、最も出動する機会が多く、剣に自信がある精鋭の集まりだから、きっと腕も相当立つのだろうなぁ…。

