勇「…ところで、一つ問題があるんだ」



『…何でしょう、?』



 急にまた、真剣な顔に戻る。



勇「…雪景くんは副長助勤になるから、一人部屋になるんだけど…今、我が壬生浪士組はゴタゴタしていてね…部屋が空いていなくてね」



歳三「廊下に布団敷いときゃいいだろ」



勇「こらトシ!! 冗談も程々にしなさい」



 …土方さんからしたら、冗談じゃないようにも思えるんだけど。



総司「誰かと一緒の部屋になっちゃうってことですね」



 …一応、私 嫁入り前なんだけど…。



歳三「んじゃ、俺の部屋にしろよ。 他の奴らじゃ寝首掻かれるかもしれねぇからな。 大丈夫だ、いざというときはラクに一撃で仕留めてやる」



 …絶対嫌なんですけど…。 何もしなくても殺されるんじゃ…?



 どう考えても寝首掻かれるの私の方だよね…?



総司「だめですよ、雪乃さん。 数々の女性と関係を持ってきた、百戦錬磨の土方さんの部屋に行ってしまえば、襲われちゃいます」



 …そういえば、奉公先で女の人孕ませたりしたのとあるって、なんか聞いたことある…。



歳三「あ゛ぁ? こんな色気のねぇ女、刺し違えてもねぇわ!!」



『こっちの台詞です。 顔がかっこいいと、世界中の女が全員俺のこと好き…みたいな、イタい勘違いするから、厄介なんですよね』



 まったく…とんだナルシスト野郎じゃないか…。 ふぅ…と、一つため息を付くと、地獄耳の土方さんに聞こえていたらしく、ピクリと震えた。



歳三「………ちょっと表出ろや」



総司「雪乃さんっ、こういう反応のときは、図星って意味ですよ〜」



歳三「…近藤さん、ちぃと この生意気 共の始末許可書を作成して頂きたい」



 右手を柄に添え、左手の親指でカチッと、鯉口が切る土方さん。



勇「まあまあ、落ち着いてくれトシ…流石に収集がつかなくなる」 



 近藤さんは呆れ顔だ。



勇「…結局、今夜はどうする? 平隊士と雑魚寝だけは絶対避けたいからね…」



総司「それじゃあ、私の部屋でいいんじゃないですか?」



 ぴょこっと、手を挙げたのは沖田さん。



総司「土方さんみたいに、襲ったりしませんし…何にせよ、雪乃さんを連れてきたのは、私ですから。 責任とります」



 な、なにこれ…。 責任とるとか…何だか、お嫁さんになるみたい…。 近藤さんが私のお父さんで…って、私 何考えてんの。



 ぶんぶん…と煩悩を振り払うように、首を振って、赤くなった頬と耳を隠すように 俯いた。



勇「…うむ、…スマンが雪景くん。 今夜のみ 総司の部屋で寝てくれるか? 勿論、寝る時は屏風で仕切るから…」



 申し訳無さそうに、先程近藤さんに言われた。





     ❀ ❀ ❀





総司「いやぁ…まさか雪乃さんが、ウチに入ることになるとは思いもしませんでしたよ」



 …というわけで、今日は沖田さんの部屋に、布団を敷いて寝ることになったのだ。 今、二人で沖田さんの部屋に向かうために、歩いている。



 こっちは、今の今まで、男の人と同じ部屋で寝たことなかったから、緊張気味なのに。 沖田さんは、近藤さんに命じられても、変わらず笑っていた。



『そうですねぇ…ありがとうございます、沖田さん。 貴方に見つけてもらえなければ、私は…』



 きっと、野宿でもしているだろう。 ご飯も食べられなかったかもしれない。



総司「いえいえ…あっ、今度 お手合わせ願います。 斎藤さんとか、藤堂さんが羨ましくて…」



『はいっ!』



 新撰組きっての、天才剣士と呼ばれた沖田さんとの手合わせなんて、それこそ夢見たいだ。 これは時代を超えたからこそ、実現できる。



 ……そういえば、私って 元の世界では行方不明…とかなってんのかな…。 それとも、私の存在こそが、無かったものになっているのか。



 ふぅ…とため息を付く。



総司「やった! あ、そういえば雪乃さんって、その服以外 持ってないんですか、?」



『あ…持ってない…ですね』



 さすがにセーラー服のまま 寝るのは、皺ができるからやだなぁ…。 明日、沖田さんと 着物一式買いに行くから、それまでの辛抱だけど…。



総司「まいったなぁ…襦袢もないってなると……私ので大丈夫ですか?」



『ええっ?!』



 沖田さんの…いいのかなっ…。



総司「すみません…嫌ですよね。 でも他に方法が___」



『あっ…嫌じゃ、ないです…!!』