「俺と付き合ってください」

久木くんの声は震えていた。こんな時に私は瞬のことを思い出してしまう。瞬への失恋後、私は恋愛が出来なくなっていた。

「…ごめ、私」

絞り出した私の声も震えていた。久木くんの彼女になれたら幸せだろうな、と思いつつも彼に迷惑をかけたくなくてそう言ってしまう。でも、全て正直に話したいと思った。

「初恋、引きずってて…振られて以来恋がわかんなくなって。久木くんのことは好きだけど完全に吹っ切れたか分からないのに付き合って嫌な思いさせたくない」

自分の口から出た言葉に自分で驚く。久木くんのこと好き、だったのか…?これが恋愛としてか人としてかは分からないけれどあっさり口に出してしまった。

「陽向先輩のそういう相手のこと1番に考えるところも好きです。…待ちますよ」

先程より柔らかい声と表情で久木くんがそう言ってくれた。いつの間にか下の名前呼びだ。

「恋愛出来ないっていうのは多分、好きな人を好きな自分を信じれないんです。だから、自分のこと信じてください」

まっすぐな彼の言葉はそのまんま私の心に響いた。自分のこと信じて、か。

「…私ね、ずっとすごいと思ってた。」