そして――。
 とうとう、今日はオーディションの日。
 天気は快晴!
 のどの調子もいい。
 課題のセリフは、ばっちり頭に入ってる。
 オーディション会場にも迷わず行けた。
 ここまでは、なにもかもが順調。
 だから、あとは、わたしの実力にかかってる!

「では6番、朝見ひなさんどうぞ」
 係員のひとに呼ばれた。
 いよいよわたしの番だ。
 神さま、どうかどうかお願いします。
 これまでやってきた努力が実を結ぶよう、どうかわたしのこと見守っててください!


 それから、数日後の放課後。
 早めに部室に行ったつもりだったのに、小鳥遊(たかなし)部長だけはもう来ていた。
「あ……」
 部長の姿に気づいたとたん、心臓がドキッと大きな音を立てる。
「あさみん、どうだった? そろそろオーディションの結果届くって言ってただろ?」
 おだやかな笑みを浮かべる部長。
 その笑顔を見ていると、心がホッとして、あたたかくなって。
「あさみん?」
「うっ……うっ……」
 抱えていた気持ちがあふれ出して、みるみる涙が止まらなくなった。