数年前に出会ったときと同じバルコニーで、ルーリエは穏やかに笑う。イグナーツに肩を抱かれ、二人で夜空の月を仰ぐ。薬指にはピンクゴールドの結婚指輪が嵌められている。 もうルーリエを悪女と呼ぶ者はいない。 夫から一途な愛を受ける、ただのクライン伯爵夫人なのだから。