冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる

 どうやら悪い男に捕まってしまったようだ。これは、そうそう逃してもらえそうにない。でもいいのだ。最初からルーリエは逃げるつもりなどないから。
 ずっと捕まえてほしかった。自分だけを見てくれる人に。

 ◆◆◆

 悪女の噂は、あの夜会を境に立ち消えた。
 洗脳状態から解放された貴族たちは自分に都合の悪いことはきれいに忘れ、第一王子は魔界に連れて行かれても当然の罪人という扱いで落ち着いた。後日、病弱な第二王子が次代の王を辞退したため、王太子には第三王子が指名された。
 今夜は王太子ご生誕を祝う舞踏会。着飾った紳士淑女が集い、踊り明かす日だ。
 けれど、ルーリエは夜会を一人で出席することも、壁の花になることもない。なぜなら横には、いつもルーリエだけを見つめるイグナーツがいるから。
 寄り添う二人の中に割って入るような愚か者はいない。