冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる

 黒のフリルとリボンは取り払われ、爽やかな青紫のドレスだ。
 裾に向かった青紫から桃色のグラデーションは、イグナーツとルーリエの瞳の色を連想させる。薄手の生地は滑らかな触り心地で、腰から足元にかけてチュール風の上品なレースがふわりと揺れる。腰元には大ぶりのコサージュ。シルクの手袋は清潔感がある純白だ。最後に真珠のイヤリングとネックレス、さながら海の女神の装いだ。
 身をひねり、新しいドレスをくまなくチェックする。動くたびにひらりひらりと重なったレース生地が揺れるのが楽しい。童心に戻ったような心地になる。
 ルーリエは両手を合わせて、イグナーツにこの喜びを一生懸命に伝えた。

「イグナーツ様の魔法は素晴らしいですね! ドレスが魔法で変わるなんて夢みたいです。これほど嬉しい贈り物はありません。一生、大切にいたします」