冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる

 事の重大さがわかったのだろう。顔色蒼白になったヨハニスがバッと首を横に動かし、叫ぶように言う。

「ル……ルーリエ! お前からも何か言ってくれ。俺は騙されたんだ。助けてくれッ!」
「殿下……。わたくしに今までしてきた仕打ち、まさかお忘れですか? たとえ本心からの言葉でなくても、一度口をついて出た言葉は取り消せません。どれほど謝っても、決してなかったことにはならないのです。それに、あなたを助ける人は誰一人いないでしょう。誰も魔界になど行きたくないでしょうから」
「…………そ、そんな」

 がくりとうなだれるヨハニスは哀れだと思うが、助けたいとは微塵も思わなかった。少しは情に流されるかもと危惧していたが、取り越し苦労だったようだ。
 ルーリエは無言のまま、パシッと黒扇を折りたたむ。