冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる

「ふふん。わかっているじゃない。中級悪魔のアタシに喧嘩を売ったこと、後悔させてあげるわ。……ってちょっと! この手枷どうなっているの。外れないじゃない!!」

 大口を叩いていたのは、いつでも逃亡できると思っていたからに違いない。
 その証拠に、彼女の顔は焦りの色が濃くなっていく。
 どうにかして脱出を試みているようだが、暴れば暴れるほど締め付けがひどくなっているようだった。苦痛に耐えるヘレンを見下ろし、イグナーツが冷たく言い放つ。

「簡単に外れたら拘束した意味がないでしょう」
「つべこべ言わず外しなさいよ! アタシはこの国を牛耳って、魔王様の幹部に昇進するんだから。痛い目を見るのはそっちよ」