冤罪から死に戻った悪女は魔法伯の花嫁に望まれる

「多くの者……ですか。こちらに名を連ねているのは、中流貴族や下級貴族ばかりのようですね。まさか、王族の圧力で脅して書かせたのですか?」
「なっ……我が王家を愚弄するつもりか!?」
「いいえ。ただ事実確認をしたまでです。賢い上級貴族は署名しなかったのだ、ということを」
「ふん、どうだかな。あいにく、その署名は善意から寄せられたものばかりだ。貴様の罪は明白だからな。――誰か! この悪女をひっ捕らえろ!!」

 頃合いを見計らっていたように、ざっと衛兵たちが一斉にホールの真ん中に集結する。ガチャガチャと鎧の音が近づき、ルーリエの背後に立つ。

「…………残念ですが、捕らえられるのはあなた方ですわ」
「ま、待て! 衛兵たちよ、何をする!? 貴君らが捕らえられるのは向こうの悪女だぞっ」

 慌てるヨハニスの制止も虚しく、二人とも漆黒のローブをまとった魔法兵によって後ろ手に縛られる。