「……失礼ながら、古くからの知り合いでもないのに、助けていただく理由がありません。わたくしのような小娘を助けても、イグナーツ様には何のメリットもないのではと」

 むしろ、時間の無駄になるのではないか。
 申し訳なく思っていると、心配は杞憂だというようにイグナーツは首を横に振った。

「別に何も不思議ではないですよ。ここにもあなたに一目惚れした男がいた、ただそれだけなのですから」
「……は……?」
「ただし、条件があります」

 硬い声にぴしりと緊張が走る。
 これは慈善事業ではない。対価を求められるのは当然だろう。

「無事に未来を変えられたら、私の花嫁になってもらいたい」
「…………。わたくしは未来で悪女呼ばわりされていたのですよ。結婚してから後悔することになるかもしれません。それでも求婚してくださると?」