「――でしょうね。あなたはカールストン家のご令嬢ですから。平気で嘘をつくような教育は受けていないはずです。代々カールストン家は嘘を殊の外嫌いますから」

 どうやらその話は社交界でも有名らしい。
 事実、ルーリエは幼少の頃から「嘘はいけないこと」だと徹底的に教え込まれてきた。一般常識と思っていたが、我が家は少々特殊だったようだ。
 こほん、と咳払いをしてイグナーツが話を本題に戻す。

「先ほどの話ですが……。突如変わった第一王子殿下や家族の態度、何らかの魔法か呪いが使われた可能性が高い。特にヘレン嬢は要注意人物ですね。幸い、魔法関連は私が得意とする分野です。早速、明日から調査を始めましょう」
「ご協力、感謝いたします。……ところで、以前イグナーツ様とどこかでお会いしたことがありましたか?」
「いえ、今日が初対面です。それが何か?」