紺碧の瞳はまっすぐとルーリエを見つめてくる。
 何か裏があるのではと探るが、目の前の男は心配そうな面持ちのままだ。純粋にこちらを案じるような視線に耐えきれず、パッと視線を逸らしてしまう。

(こ、この様子だと、どうやら「先ほどの壁宣言」も冗談ではなさそうね)

 少し迷ったが、気持ちを吐露することで解決の糸口をつかめるかもしれない。

「お心遣いに感謝します。実は――」

 意を決してこれまでの出来事を端的に説明すると、イグナーツは端正な顔をしかめた。だが口元に手を当てて考えこむ時間は短かった。

「……なるほど。ルーリエ嬢の言い分はわかりました。その話、信じましょう」
「し、信じてくださるのですか……? 自分で言うのもなんですが、とても現実味のない話だと思うのですけれど」
「でも事実なのでしょう? それとも作り話だったのですか?」
「いいえ。嘘はついていません」