フレイヤたちは馬車の中で、違法な取引を止めるための作戦会議を始めた。
「王都各地に、一般人に変装した騎士と魔導士を配置し、イルム王国のお二人とオルメキア王国の宰相を見つけ出しましょう。そして見つけた後は、取引の現場を押さえるのです」
まずはシルヴェリオが計画を述べる。
騎士も魔導士も、普段は制服を着ているが、任務によっては変装している。
それは、追跡対象に警戒されないよう、敢えて立場を隠すためだ。
シルヴェリオが計画を話し終えると、ネストレが「そうだな」と首肯した。
「現場を押さえ、証拠が消される前にその場で押収すれば言い逃れできないだろう。そのためには、迅速な判断と対応を要するな」
「はい、最優先事項は、イルム王国のお二人とオルメキア王国の宰相が禁術に関わる取引をしていた証拠を掴む事だと部下たちに伝え、各自に判断を委ねます。もしも彼らを逃がしてしまっても、証拠を確保していれば、イルム王国とオルメキア王国に本件を連絡して指名手配させるので、取引を止められるでしょう」
「そうだな。身柄を拘束しただけで証拠が無ければ、言い逃れされる可能性が高い」
ネストレは顎に手を添えて思案すると、アーディルに声をかけた。
「アーディル殿下はどう思いますか?」
「異国で摘発されて証拠まであれば、さすがに父上も二人を庇ったりはしないだろう。禁術を使おうとしていたことが各国に知られれば、国際問題になるからな。その点では、第三王妃の実家だから目を瞑るなんてしないだろう。国王陛下も第三王妃殿下も、そういった損得勘定はできる方たちだ」
アーディルは念のために、祖父と叔父を確保次第、母である第三王妃に便りを送って根回しすることにした。
祖父と叔父の使用としていることは非人道的で、決して許されることではないと伝えるのだと言う。
第三王妃にとってアーディルは、目に入れても痛くない息子なのだ。
その存在は、血を分けた父親や兄よりも大切である。
だから、第三王妃はアーディルの言葉をそのまま自分の意見としてイルム国王に伝えると、アーディルは予想している。
第三王妃は、このまま国王となるアーディルにとっての不穏分子となる芽は早めに摘んでおきたいのだ。
そう話すアーディルは、心なしか寂しそうな目をしていた。
「アーディル殿下の協力に感謝します。また、捜索対象の二人の似顔絵を騎士と魔導士たちに配布したいので、後で特徴を教えてもらえますか?」
「わかった。容姿の特徴や、できる限りの情報を伝える。オルメキア王国の宰相については、私も容姿を思い出せるが、念のためラグナ殿にも確認してほしい」
「ああ、そうしよう」
ラグナには、明日の朝一番にネストレがイェレアス侯爵家へ赴いて聞くことになった。
本当はすぐにでも聞いておきたいが、今日は移動で疲れているから配慮し、その代わりにアーディルから事前に聞いておくことにしたのだ。
「騎士と魔導士をそれぞれ組み分けして、数人で行動させましょう」
「そうだな。戻ったらすぐに、組み分けを考えよう」
シルヴェリオとネストレが、どんどん話を進めている。
成り行きを見守っていたフレイヤは、自分が蚊帳の外になっていると思い、慌ててシルヴェリオに呼びかけた。
「私も王都中を歩いて取引場所を探します!」
「いや、フレイさんはこの作戦に参加してはならない」
シルヴェリオは少しの迷いも見せず、きっぱりと答えた。
「フレイさんは、建国祭で来賓に贈る香水を作らなければならないのだから、引き続きそちらに当たってくれ」
「ですが……、オルメキア王国の第一王女殿下の力になりたいのです。エイレーネ王国に来てまで第一王子殿下を守るとされているのですから……」
「君は調香師だ。調香師の仕事は、人々に香りを届ける事だろう? 平和を守るのは、魔導士の仕事だから、任せてくれ」
「……わかりました」
シルヴェリオの言う通り、自分には期日が差し迫った大きな仕事がある。
その仕事は、国王陛下と王妃殿下たちの期待がかかっており、コルティノーヴィス香水工房の同僚たちにたくさん協力してもらい、そしてサヴィーニガラス工房の職人たちの希望が込められている、大切な仕事なのだ。
(時間は限られているから、どちらかしかできないよね……)
頭ではわかっているが、自分が力になれないことが悲しかった。
そんなフレイヤの想いを知ってか、シルヴェリオが優しい笑みを浮かべる。
「フレイさんが建国祭で来賓に贈る香水を終える頃には、全て片付いているよう努める」
「……よろしくお願いします」
自分は、祈る事しかできないのだ。
フレイヤは膝の上に乗せている手を、ギュッと握りしめた。
「王都各地に、一般人に変装した騎士と魔導士を配置し、イルム王国のお二人とオルメキア王国の宰相を見つけ出しましょう。そして見つけた後は、取引の現場を押さえるのです」
まずはシルヴェリオが計画を述べる。
騎士も魔導士も、普段は制服を着ているが、任務によっては変装している。
それは、追跡対象に警戒されないよう、敢えて立場を隠すためだ。
シルヴェリオが計画を話し終えると、ネストレが「そうだな」と首肯した。
「現場を押さえ、証拠が消される前にその場で押収すれば言い逃れできないだろう。そのためには、迅速な判断と対応を要するな」
「はい、最優先事項は、イルム王国のお二人とオルメキア王国の宰相が禁術に関わる取引をしていた証拠を掴む事だと部下たちに伝え、各自に判断を委ねます。もしも彼らを逃がしてしまっても、証拠を確保していれば、イルム王国とオルメキア王国に本件を連絡して指名手配させるので、取引を止められるでしょう」
「そうだな。身柄を拘束しただけで証拠が無ければ、言い逃れされる可能性が高い」
ネストレは顎に手を添えて思案すると、アーディルに声をかけた。
「アーディル殿下はどう思いますか?」
「異国で摘発されて証拠まであれば、さすがに父上も二人を庇ったりはしないだろう。禁術を使おうとしていたことが各国に知られれば、国際問題になるからな。その点では、第三王妃の実家だから目を瞑るなんてしないだろう。国王陛下も第三王妃殿下も、そういった損得勘定はできる方たちだ」
アーディルは念のために、祖父と叔父を確保次第、母である第三王妃に便りを送って根回しすることにした。
祖父と叔父の使用としていることは非人道的で、決して許されることではないと伝えるのだと言う。
第三王妃にとってアーディルは、目に入れても痛くない息子なのだ。
その存在は、血を分けた父親や兄よりも大切である。
だから、第三王妃はアーディルの言葉をそのまま自分の意見としてイルム国王に伝えると、アーディルは予想している。
第三王妃は、このまま国王となるアーディルにとっての不穏分子となる芽は早めに摘んでおきたいのだ。
そう話すアーディルは、心なしか寂しそうな目をしていた。
「アーディル殿下の協力に感謝します。また、捜索対象の二人の似顔絵を騎士と魔導士たちに配布したいので、後で特徴を教えてもらえますか?」
「わかった。容姿の特徴や、できる限りの情報を伝える。オルメキア王国の宰相については、私も容姿を思い出せるが、念のためラグナ殿にも確認してほしい」
「ああ、そうしよう」
ラグナには、明日の朝一番にネストレがイェレアス侯爵家へ赴いて聞くことになった。
本当はすぐにでも聞いておきたいが、今日は移動で疲れているから配慮し、その代わりにアーディルから事前に聞いておくことにしたのだ。
「騎士と魔導士をそれぞれ組み分けして、数人で行動させましょう」
「そうだな。戻ったらすぐに、組み分けを考えよう」
シルヴェリオとネストレが、どんどん話を進めている。
成り行きを見守っていたフレイヤは、自分が蚊帳の外になっていると思い、慌ててシルヴェリオに呼びかけた。
「私も王都中を歩いて取引場所を探します!」
「いや、フレイさんはこの作戦に参加してはならない」
シルヴェリオは少しの迷いも見せず、きっぱりと答えた。
「フレイさんは、建国祭で来賓に贈る香水を作らなければならないのだから、引き続きそちらに当たってくれ」
「ですが……、オルメキア王国の第一王女殿下の力になりたいのです。エイレーネ王国に来てまで第一王子殿下を守るとされているのですから……」
「君は調香師だ。調香師の仕事は、人々に香りを届ける事だろう? 平和を守るのは、魔導士の仕事だから、任せてくれ」
「……わかりました」
シルヴェリオの言う通り、自分には期日が差し迫った大きな仕事がある。
その仕事は、国王陛下と王妃殿下たちの期待がかかっており、コルティノーヴィス香水工房の同僚たちにたくさん協力してもらい、そしてサヴィーニガラス工房の職人たちの希望が込められている、大切な仕事なのだ。
(時間は限られているから、どちらかしかできないよね……)
頭ではわかっているが、自分が力になれないことが悲しかった。
そんなフレイヤの想いを知ってか、シルヴェリオが優しい笑みを浮かべる。
「フレイさんが建国祭で来賓に贈る香水を終える頃には、全て片付いているよう努める」
「……よろしくお願いします」
自分は、祈る事しかできないのだ。
フレイヤは膝の上に乗せている手を、ギュッと握りしめた。


