「え……?」


思ったよりもずっと明るい先輩の表情に、私は驚く。


「玉砕ー!!!」


大きなバツを作って、グラウンドに向ける先輩に、グラウンドからは、「まじかー!!」という叫び声と響く笑い声。


「あはは、面白いだろ、あいつら」

「………はい……」


驚いている私に、先輩は優しく微笑んだ。


「考えてくれて、ありがとうね。」

「い、いえ、こちらこそ、お誘い頂いてありがとうございました」


頭を下げると、先輩は、軽くひらひらと手を振った。


「また気が変わったらいつでも言ってね?あと亜由ちゃんも、バトやめるときは連絡して」

「えっ、先輩にそんなこと言われたらやめれそうです」

「あはは、本当面白いね」


そんな軽やかな会話を残してグラウンドに戻って行った先輩。

固くしていた体がふっと緩む。


「鈴があんなはっきりと断るの初めて見たからびっくりした」

「うん……。すっごい緊張した。」


ストンと落ちるように席に座ると、亜由は優しい笑みを見せて隣に座る。


「でも安心したかも。鈴っていつもほしい返事くれるからさ、みんなもそれに甘えてるところあると思うし。
無理してないかな~って心配だったんだよね」


亜由の言葉に、私は少し目を丸くして笑みを零した。


「……うん、ちょっと、無理してたかも」

「やっぱり!?良くないよ~それ、変えてこー!?」


明るい亜由に、私は声に出して笑ってしまう。


奏の言った通りだ。

私の勇気が足りなかっただけで、ありのままの私を受け入れてくれる人もたくさんいる。


少しずつ、前に進もう。


「なんか食べて帰ろー!!私ハンバーガーの気分だけどどう?」

「んー…私、お米食べたい」

「えっ、まじか、じゃんけんだなそれは!」


全力のじゃんけんと全力の笑顔で、私たちは高校を後にした。