なんとなく、一緒にいたいと感じていた奏への安心感の理由が、
明確な理由で裏付けされたような感覚になっていた。


奏は、少し迷いながら、そっと私の頭に触れた。

その冷たい手は、お兄ちゃんの華奢で温かい手とは違って、しっかりした骨を感じる男の人の大きな手だった。


違うのに安心する。

奏はもう、お兄ちゃんの代わりじゃない。私にとって特別な存在なんだ。


「俺の前の鈴が自然体なら、そのままで十分優しいし素敵だよ。
もっとわがままに生きたって、可愛い程度じゃん?」


安心させるような優しい笑顔に、私は泣きそうになった。


ずっと隣にいて欲しい。

奏の存在が、きっと、お兄ちゃんとお姉ちゃんがいなくなって、
ぽっかり空いてしまっていた心の隙間を埋めてくれる。


確信に近いその気持ちを抱えるように、私は、ぎゅっと目を閉じた。