「やっぱり。鈴ちゃんだよね?」


奏との会話に夢中になっていた私は、声を掛けられるまでその存在に気付かなかった。


前に座っていた奏が顔を上げるのにつられるようにして顔を上げると、そこには二人のクラスメイトがいた。


「あ、ああ!お疲れ様!」


私は、染みついた笑顔を張り付けて、元気に手を上げた。


「びっくりしたー!気付かなかった!」

「私達も、似てる人かなとか思って様子見ちゃってた!」


ちらちらと奏に向く女の子の視線に少しの気まずさを覚えて、私は誤魔化すように笑う。


「えっと、友達?」


きっと聞かれるだろう。

予想していた私は、すらすらと用意していたように言葉を並べた。


「うん、友達。勉強教えてもらってて。ほら、かしこいから」


奏の制服を指差すと、彼女たちは一瞬顔を見合わせ、にこりと笑う。


「あ、そうなんだー!鈴ちゃんいつもと雰囲気違う気がしたから……。そっかそっか」


…恋人かと思った。


そんな言葉が裏側に見える中、奏に伝わっていないかが不安になり、視線を泳がせる。


「そんなことないよ!いつも通り。」


にこりと微笑むと、2人は笑って、その場を後にした。

ぺこりと、愛想のいい笑顔を浮かべ会釈をする奏。


クラスメートが去って行ったあと、少しの気まずさに顔を見ると、奏としっかり目が合った。


「移動する?」

「ううん、大丈夫」

「ん、じゃあ続きね?」


変わらない様子の彼に安心し、耳を傾ける。


彼女たちと会ってから、少し大人しくなった私を奏は、黙って見つめていた。


そこから1時間ほど勉強を進めて、私たちはそのファミレスを後にした。