「ほらこの神社!見たことあるっしょ?」

「あー…この間おすすめ乗ってたかも…近くなんだね」


スマホに流れる紹介動画を見せてもらいながら歩く。

階段をおりていくと、靴箱で珍しい顔を見かけて、私は声を掛けた。


「美希ちゃん!今日来てたんだ?」

「…あ、うん。朝体調良くて。教室にも行こうと思ったんだけど…」


何となく濁される語尾に、私はその先を言わなくてもいいように咄嗟に笑い返す。


「そっかそっか!そんな日もあるよねえ~」


美希ちゃんは同じクラスの女の子。

病気がちであまり教室に来れないみたいで、学校には来ても保健室にいることもしばしば。

私は、美希ちゃんを気にかけていて、出来るだけ学校へ来た日は声を掛けるようにしている。


「あ、そうだ!これね、ノートのコピーなんだけど!」


カバンの中から、会えた時に渡そうと用意していたクリアファイルを取り出す。


「え…またコピー取ってくれたの…?ごめん…」


「何で謝るの!いつも使ってくれてるって保健室の先生言ってたからさ!

読めなくて迷惑とかだったらそう伝えてくれたらいいからね!」


「そ、そんなわけないよ…。ありがとう」

「うん」


大切そうに両手で受け取ってくれる美希ちゃんの手元を見つめる。

細くて真っ白な手首。


私は彼女に、病気で入院していた過去の自分を重ね合わせていた。


「鈴?置いてくよ」


隣の列の靴箱から顔を出した亜由ちゃん。


「置いてくのはやめて?」

「あはは、冗談。
って話してたんだごめんごめん!」


美希ちゃんの存在に気付いていなかった様子の亜由が、人懐っこく笑うけど、

亜由とはあまり面識がない美希ちゃんは少し引きつった口角で、曖昧に笑う。


私はその様子を見て、急ぎ早に靴を履いた。


「じゃあね、美希ちゃん!」

「またね、教室おいでよー」

「うん、ありがとう」


美希ちゃんに手を振って校舎から出る。

少し気を遣わせてしまっただろうか。


普段学校に行かないのに突然会ったクラスメイト…って、緊張するもんね。

申し訳ないことしちゃったかな…。