当たり前だけど、残酷な現実に戻された気分になってしまった私。

不思議と抱いていた安心感もすっかり萎んでしまって、私は肩を落とす。


「…だけど。

君が安心していられるのなら、それは嬉しいけどね」


顔を上げた私は、目の前の映像に目を丸くした。

その消えてしまいそうな、美しい微笑みは、驚くほど、お兄ちゃんそのものだった。


初対面だし、普段の私なんて知らないはず。

なのにどうして…。


「なんか、そんな顔してたから。

その、お兄ちゃんのこと、大好きだったんだね」


「……うん」


私は驚きながらも頷いた。

全てお見通しなんだ。

そんなところも、お兄ちゃんの包容力と重ねてしまい、私は首を振る。


「お兄ちゃんにはなれないけど。俺と、友達になろうか。」

「うん、なろう?」


そんな不思議な空気感で、私と奏は友達になった。