「……本当にここなのかな……?」



私は、【モンスター学園】なんていう変わった名前の学園の寮の前に立ち尽くしていた。


不気味過ぎる。その一言に尽きる。

森に囲まれた、何の手入れもされていなさそうな学生寮。

外観は不気味だが、さすが森の中にあるだけあって、周りの空気が澄み切っていて自然を感じられる。



私は今、この場所に寮母として来ている。



高校生でもできて、大した資格も要らず、給料の良い仕事――それが、モンスター学園の寮母としての仕事らしい。

正直まだ半信半疑だ。

勧められるままに契約を結んだけど…何のアルバイト経験もない私がこんな好待遇の職に就けるわけがない、なんていう疑念がまだ残る。



資料によると、モンスター学園は中高一貫の男子校らしい。

うまい話には裏がある……ここの生徒が手も付けられないほどの問題児ばかりで、その世話を全て寮母に押し付けようという魂胆だったりしないだろうか。


寮内へ入ろうと入り口のドアを開けると、ギィィイイイイ……とホラー映画にありそうな大きな音が出た。

ボロッボロだ……。


「すみませーん。寮長さんいますかー?」


顔だけ中に入れて聞いてみるけれど、誰からも返事がない。




廊下は意外にも綺麗だ。

この寮、もしかしてボロいのは外観だけ……?

土足でいいのか躊躇いつつも、靴箱らしき物は見当たらないので、とりあえず入ってみる。


「あのー…」


生徒の気配を感じられない。

今日は休日なのに、寮にはいないのかな…。



辺りを見回していると、廊下の奥の方から風が吹き抜けた。


どうやら窓が開いているみたいだ。


心地良い風に惹かれるように、奥の方へと歩いていく。



近付くにつれて、窓の側にある長椅子がハッキリ見えてきた。


そこにいたのは――大人っぽい顔付きをした生徒らしき人物。


茶色がかったサラサラの髪が風に揺れている。


気持ち良さそうに寝息を立てるその様子は微笑ましいけど、ここじゃ寒そうだ。