籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

「ちょうどお前の話をしていたところだ」

「俺の…ですか?」

「ああ。美鳥、こいつがRULERに欠かせない副総長を務める男、井波玲(いなみれい)だ」


井波…玲。


わたしは、ぼんやりとその黒髪の人を見つめていた。

その人は十座のもとへ向かう途中、わたしのそばを通りすぎるときに少しだけ視線を配った。


一瞬だけ目が合う。


――その瞬間に気づいた。

深い闇の色をした瞳に見覚えがあると。


それは、路地でわたしを助けてくれたあの人だった。


驚いて「…あっ」と声を発しそうになったけど、むしろそうなりかけていたのは黒髪の男の人のほうだった。


わたしのそばで立ち止まり、目を丸くしてわたしを見下ろしている。

まるで、『どうしてここに』と言いたそうな顔をしている。


たしかに…そんな反応になるかもしれない。