――その夜。

わたしは1人、暗い部屋で涙を流していた。


『今この瞬間をもって、美鳥を本命の妃として迎えることをここに宣言する!』


さっきの十座の声が…頭から離れない。


これを、『絶望』という他になんと呼べばいいのだろうか。


うっすらと窓に映るのは、妃候補No.1の証――純金のトップが輝くチョーカーを首につけた、涙で頬をぬらすわたしの顔。


「こんなものっ…!!」


力いっぱいに引きちぎろうと、わたしはチョーカーを荒々しくつかんだ。


…しかし、特別な構造で作られたこのチョーカーはびくともしない。


そのかわりに――。

コトンとかすかな音が足元から聞こえて目を向けると、シルバーの小さな指輪が転がっていた。


それを見て、慌てて拾い上げる。


これは、わたしの首にチェーンを通してネックレスのようにしてつけていた大事な指輪。