…驚いた。

あの十座でも、人を気遣う言葉が出てくることに。


「ま…まぁ、このまま安静にしていれば」

「そうか。それならよかった」


なぜか今日は、気色悪いくらいに十座の様子が違った。

まるで別人みたいに、思ったよりもやさしい。


「それにしても、こんなことになって悪かったな。まさか、茉莉花がお前にそんなことをしでかすとは思わなかった」

「わたしはべつに…かまいません」


顔に熱湯をかけられそうになったときは本当にこわかったけど、あの状況で腕のやけどだけで済んで幸いだと思っている。


「茉莉花さんは、心底あなたのことが好きだったみたいですし…。そこからくる嫉妬で、あんなことをしてしまったのはわかっているので」

「そうだな。女を扱うのも難しいって、初めて思い知ったよ」


十座はなにか考え事をするように、腕を組んで右手を自分の顎に添える。