初めて立った、十座の部屋の前。

わたしは深呼吸をすると、そのドアをノックした。


中から返事はなかったけど、かわりにドアが開いた。


「美鳥、よくきたな」


ニッと口角を上げる十座。

わたしは部屋の中へと招き入れられる。


本当は体が震えそうなくらいこわかった。

それを悟られないように、なんとか意識を保つ。


わたしは、ソファに座るように促される。

わたしが座ると、そのすぐ隣に十座も腰を下ろす。


あまりにも近すぎる十座との距離に、わたしは一度立って座り直そうとしたとき――。


「待てよ」


そう言って、十座がわたしの二の腕をつかんで引っ張った。

十座から距離を取ろうとしたのに、再び引き戻される。


「やけどの具合はどうだ?」


十座が、包帯が巻かれたわたしの腕を心配そうに見つめている。