籠の中の鳥 〜囚われの姫と副総長〜

そう吐き捨てた十座が、わたしをソファに押し倒す。

突然の十座の行動に、わたしは一瞬顔がこわばった。


「ほんと、お前はいい顔をするな。睨む顔も怯える顔も、そのすべてがたまんねぇ。もっとお前のいろんな顔を見てみたくなる」

「…やめっ」

「さて、泣き叫ぶ顔はどんなのだろうな?」


ご馳走を目の前にした肉食動物かのように、舌なめずりをする十座。


一度は十座に襲われかけたものの、結局はあの薬騒動で難を逃れた。

それからは、なるべく十座を刺激しないようにしていたけど、…またしても。


こういうとき、わたしの頭の中に真っ先に思い浮かぶのは玲の顔。

玲は、わたしのヒーローだから。


でも、玲は今は外出中。

わたしを助けてくれる人などいない。


それにお兄ちゃんのこともあって、わたしは十座に逆らうことができない。